私が最初に着手したモデルは「FLOWHUNT」。言わずもがな、干潟やその他、あらゆるシャローフィールドに対応するウエーディング用シーバスロッドである。全国的にシャローランナーと言えば125mmがスタンダートなルアーサイズとなるが、昨今の状況を加味すると100~110mmというルアーサイズを多用する場面も増えてきている。
新たに採用した四軸+W.C.Wという手法はキャスト時の初速が飛躍的に高まった。これにより125mmサイズも100mmサイズも同じく速いスピードでルアーが射出され、同時に安定した飛行姿勢を確保することに成功している。また、強靭なバットセクションは遠距離でのヒットをも確実にフックアップさせることが可能となった。ハイプレッシャーの掛かるあらゆるメジャーポイントでは遠距離のバイトを確実に拾い上げる能力が欠かせないものとなる。FLOWHUNTはシャローゲームの新たな可能性と発展性を追い続け、常に新スタイルを提案し続けなければならない。
すっかり定番のシーバススタイルとして定着した磯マル。回遊ルートを特定し、持てる知識を総動員して時合を絞り込む。考え抜いた回遊があると思われる時間帯に集中してキャストを繰り返し、時に掛かるランカーと対峙するのが‘磯マル’と言われるゲームの本質である。ともするとただキャストを繰り返すだけの単調なゲームと思われるかもしれないが、昨今ではただキャスト&リトリーブを行うのではなく、ドリフトやウインドドリフト、日中のトゥイッチやブレード系ルアーへの対応もロッドに求められる性能となる。
潮の流れを掴む確かな感度、はるか沖の流れを攻略する為の遠投性等に加え、高い操作性とキャスタビリティが必要だ。10ftを超えるロングロッドは特に操作性能が著しく悪くなる傾向があるが、そこはリールを取り付けた状態での絶妙なウエイトバラスを弾き出し、アクションを付けやすく操作性の高いロッドを完成させることに成功した。
“バックスリー”とは三代目バッカニアの意である。ヒラスズキは、そのイメージから荒磯の大味な釣りだと勘違いしている人は多い。それはまったくヒラスズキの本質を理解していないと言える。マルスズキに比べて捕食半径が極めて狭く(ルアーを追う距離が短い)神経質で視力の良いヒラスズキには、サラシが広がる瞬間を待ち、ここぞというタイミングでピンポイントにルアーを置きに行くのだ。“置く”という表現が相応しいほどにリトリーブコースはシビアである。強風の中でのキャストは、ロッドが捻じれブレが発生する。
ましてや11ftを超えるロングロッドは、例えば8ftで生じるブレとは大きく異なり、手元のブレは竿先で増幅され、ミスキャストを誘発、更に大きなパワーロスとなる。フロウハント、ポデローサのプロデュースに関わり、四軸+WCWの特性をよく理解したつもりであったが、実際強風のアゲインスト下での捻れ強度の実感は持っていなかったのかもしれない。
今回バックスリーは長崎、和歌山、伊豆…と多くのフィールドテストを実施。いずれもアゲインストの風が吹き荒れる中で行われ「捻れない凄さ」を私自らが体験することになった。なんなんだ?今まで使っていたロッドはなんだったのか?? ルアーの初速が、狙ったスポットに到達するまで落ちないのだ! 正面風を受ける場合は斜めに風を受けるように立ち位置をずらして投げていたのはもう過去の話。あえて正面からアゲインストの風を受け留め「ガチンッ!」とロッドを振り切る。並のロッドならフラフラと力なくルアーが落ちるハズだ。バックスリーは違う。アングラーのキャストパワーを確実にルアーに伝播し、“切る”という表現が最も相応しい生きた軌道を描いて飛ぶ。それだけでこのロッドの凄さを理解できる。ロッドネームが変わった理由、振れば頭でなく心で理解できるはずだ。