■RED×マサッチ“河口専用”のロッド
シーバスのベストシーズンが春と秋と言われていたのはもはや昔日の話。シーバスという魚は港湾だろうが川であろうが磯であろうが言ってしまえばどこにでもいる魚だとも言える。春夏秋冬それぞれに盛期を迎えるポイントさえ見出すことができれば年間を通して釣り続けることが可能なのだ。例えば春・港湾、夏・沖堤、秋・干潟、冬・磯ってな具合である。
しかし年間を通して同じ場所でシーバスを狙い続けられる場所も存在する。それが『河口』なのだ。なぜ河口が年間を通してシーバスを狙うことができるのか? 理由はいくつか考えられるが、最も考えられるのはベイトの豊富さであろう。アユ、バチ、ハゼ、コノシロ、カニ、アミ…汽水に絡む海域はシーバスがベイトとする魚種が非常に豊富。例え一種類がいなくなったところで入れ替わり立ち代わりなんらかのベイトがいるものなのだ。
またもう一つ注目したいのがランカーの出現度だ。『河口』は他のポイントと比較して圧倒的にランカーと遭遇する確率が高い場所なのである。マルスズキやタイリクのランカーが釣れる有名な釣り場と言えば、まず間違いなく河川の河口付近であることが多い。あのヒラスズキでさえ超が付くほどのビッグサイズは磯でなく増水した河口であることが多い。
そんな話をある居酒屋でマサッチとした。酔っ払いの戯言なのかもしれない。しかし開発はここからスタートした。いかにもアピアらしい開発のやり方だとニヤリとしてしまった。
■ロッドレングスとブランクスの進化
そんな魅力溢れる河口の釣りなのだが、私の場合、ウエーディングスタイルで狙うことが多い。しかも中〜大規模の河川が多く、時合を絞り込んでの狙い撃ちというスタイルだ。河口専用のロッドを作製するに及んで、レングスに関してまず頭に浮んだのは9ft半という長さだ。以前、私の手掛けたロッドにフロウハントというロッドがある。初代フロウハントは9.3ft。当時のブランクでは飛距離出す為には長く、しかしあまり長いと操作性が損なわれるという観点からギリギリまで悩んで9.3ftとというレングスを設定した。時代は進み二代目フロウハントは8.8ft。数年の間の技術的進歩は早く0.5ft短くした所で、飛距離が短くなるどころか逆にさらに飛ぶようになった。時代は進みさらにブランクの進化は続く。現在の最新版V3シリーズにいたってはさらに軽さと操作性が向上した。V3シリーズのブランクスを使用したバッカニア120Mというロッドがある。通常、12ftというレングスのロッドは太く重くバランスが悪くなってしまうものだ。しかしV3シリーズの優れたブランクス特性を生かすことによって軽く振りやすくバランスの良い12ftのロッド開発に成功した。12ftとというレングスを持ちながらこれだけリアグリップの短いロッドが今まで存在しただろうか?従来のブランクスでこれだけ短いリアグリップを採用したならば当然、ティップ寄り重心のバランスの悪いロッドになってしまったはずだ。
V3のブランクスさえあれば9ft半という長いレングスでも、もの凄いウエーディングロッドが造れるはずだ。操作性と長時間使用した時の疲労感からこの長さのウエーディングロッドは“必要無いもの”だと考えていた。しかしバッカニアの開発を通して長尺のウエーディングロッドっという道がハッキリと見えたのだ。
■河口専用に必要な性能は?
ここでさらに開発段階に入った9ft半のウエーディングロッドについて考える。大河川の河口にてウエーディングスタイルで攻めるということを考えると、広く遠く探れることのアドバンテージはかなり大きい。目安としては120mmクラスのミノーを確実に50m以上飛ばす性能を獲得してこそ新しい『河口専用』ロッドが完成すると考えている。
今まではレングスを9ft半レングスにすることにより数々のデメリットもあった。しかしこれはV3ブランクスの採用で一気に解決される。バッカニアをテストした時の重心バランスフィーリングは確実にこの9ft半のコラボロッドに反映される。操作性に優れていながら従来の9ft半をはるかに超える飛距離。そして全く疲労の掛からない軽量ブランクス。ショートグリップで振り抜けの良いものがV3ならできる。
当然これにフロウハントで培った流れを攻略する為の必要性能に加え、重量のあるバイブレーションも確実に使いこなせる剛性をも持たす。マサッチの方からもヘビーカバースタイルで築き上げたノウハウを惜しげもなく注ぎ込む。シーバスを掛けてからの云々はもはや語る必要ないだろう。各ロッドからの遺伝子を全て受け継ぐロッドを目指しているから、従来通り確実に超ランカーサイズを獲る性能は間違いなく持っていなければならない。
一つ言えるのは風神V3シリーズの集大成とも言うべきロッドが完成するということだ。河口には様々なベイトが存在する。そしてそのベイトの数だけパターンが存在する。その全てのパターンを使いこなせる河口専用ロッドさえあれば完璧だ。河口を征する者こそシーバスのあらゆるパターンを極められるのかもしれない。 2008年12月 中村RED祐介 |